無断リンク禁止問題についてかなり本気を出した考えてみたことの補足

それを殺人のような極端な例に当てはめても説得力が感じられません。

「無断リンク禁止」問題について、もっとテキトーに考えてみた:ekken

説得力がどうのという話ではなく、たとえばえっけんさんの今回の論においても肝心な部分の説明が欠けているという指摘なのですけど。

「リンクは自由」の考えの人にとって、リンクをしたのは「そのリンクが自分にとって必要だから」(言及先だから・後で読むメモだから、など)であって、リンクをなされた側から求められた説明に答える義務なんかどこにもないと考えているよ。

「無断リンク禁止」問題について、もっとテキトーに考えてみた:ekken

この主張をリンクの話から殺人の話に置き換えたとして、

『「殺人は自由」の考えの人にとって、その人を殺したのは「その人を殺すことが自分にとって必要だから」であって、殺される側から求められた説明に答える義務なんてどこにもない』

は、たしかに義務なんてないと思います。しかし、答えないことは殺した相手に対して無責任な態度をとっていることを意味します。リンクに関しても同様で、義務ではなくても、答えないことがリンクをした相手に対して無責任であることに変わりはないでしょう。

そして、重要な点は、殺す相手に無責任であることは「人を殺してはいけない」の根拠にはならないかどうかです。言い換えると、もしも「その人を殺すことが自分にとって必要」という状況が生じた場合に、その人を殺したのが自分であることが誰にも知られないならば、その人を殺してもかまわないのでしょうか。それとも、相手に対する無責任さ以外に、その人を殺してはいけない決定的な根拠が何か他に存在するのでしょうか。

少なくとも上記の問いに対して決定的な解が提出されない限り、殺人という具体例の存在によって「自分が選んだ相手に対して自分が望むままに無責任な行為をしてもかまわないとは必ずしもいえない」という主張をすることが可能になるでしょう。殺人の例を持ち出す理由は、このことを主張するためのものです。そして、もしもこの主張が成立しているのならば、自分が選んだ相手に対して無責任にリンクをすることが正当な行為であることを証明するためには、少なくとも「なぜリンクの場合には、自分が望むままに相手を選んでいるにもかかわらず、その相手に対して無責任であってもかまわないといえるのか」についての根拠を示す必要があるということになるわけです。

しかし、その根拠の説明は一体どこに示されているのでしょう。えっけんさんの今回の記事の中からも私はその説明を見つけることができませんでした。もしあったのならば、どの部分なのかお教えいただきたいところです。

さて、話は変わって、

ところが私は、これまでに「無断リンク禁止」という宣言に対して、リンクを行おうとする者が受け入れられる筋の通る説明を見たことがない。

「無断リンク禁止」問題について、もっとテキトーに考えてみた:ekken

についてですけど、ずいぶん前に書いた、グーグルから無断リンクをされても文句を言う人がほとんどいないのはなぜかについて考察が、その説明になっていると思います。

無断リンク禁止宣言が相手を個別に選ぶことなく(つまりウェブ全体を選んで)なされたとしましょう。この場合、宣言をした人に対する要求は「なぜお前から禁止宣言をされることを『俺たち』が受け入れなければならないのか説明せよ」という形になります。説明要求をする立場にあるのは『俺たち(ウェブ全体)』の総意であって、『俺たち』に含まれる個々の『俺』ではありません。

つまり、無断リンク禁止宣言は宣言した人からウェブ全体に対するちょっかい行為であって、もしもウェブを牛耳る何らかの組織がウェブ全体の総意という立場のもとに「無断リンク禁止宣言の禁止」を宣言したとしたら、その時こそ、無断リンク禁止宣言をする人は「なぜウェブ全体がその宣言を受け入れなければならないのか」について筋の通る説明をする必要が生じることになるでしょう。しかし、残念なことに、現状のウェブはそのような状況には至っていないわけです。

なお、ある特定の人を選んでの「お前だけは無断リンク禁止なw」宣言は、禁止されたその人から説明要求された場合に筋の通る説明をしなければ、その人に対する無責任行為ということになるでしょう。しかし、このケースは、無断リンク禁止論における本質的な争点からは外れたものであるような気がします。