こんにゃくゼリーは見た目の問題

科学ニュースあらかるとって科学記事の紹介は読んでいて楽しいのですけど、記事の紹介ではなくて個人的な意見みたいなもののみが書かれている場合は、ちょっとズレているのではないかと感じることがあります。

今回も、こんにゃくゼリーをよく噛まずに飲み込むと窒息により死に至る場合があるという問題に関する

「警告を目立たせても、小さな子どもは読めず、事故再発の危険がある」と幼児の事故防止に携わっている独立行政法人の医師が指摘したそうです。

http://www.mypress.jp/v2_writers/beep/story/?story_id=1798703#hide

に対して、

こんにゃくゼリーという商品は、文字が読めない小さな子供が、自分のおこずかいで購入できるばら売りの駄菓子」ではありません。それは大人用の嗜好食品であり、幼児食品ですらありません。

http://www.mypress.jp/v2_writers/beep/story/?story_id=1798703#hide

を根拠に、

幼児や高齢者には食べさせないでください、という危険表示が徹底されている「こんにゃくゼリー」で発生した幼児の事故、というのは非常に特殊な状況で生じたものです。

そういった事例について、「警告を目立たせても、小さな子どもは読めず、事故再発の危険がある」と指摘するのは、更に常識に欠ける思考だと考えます。

http://www.mypress.jp/v2_writers/beep/story/?story_id=1798703#hide

と主張されているようです。つまり、字の読めない幼児による窒息死が起こったとしても、それはその瞬間に幼児がこんにゃくゼリーを食べるか食べないかを管理する立場にあった大人個人の責任であり、こんにゃくゼリーを製造・販売する側の事前対策の必要性を指摘するのは筋が通らないと。

しかし、私個人としては、この考察では肝心な観点が無視されており、有用かもしれない指摘をいたずらに封殺しようとしているものにしかなっていないような気がしています。

この医師は、「古来から形状も粘性も変化していないお餅」についても、幼児や高齢者で事故が多発しているとても危険性が高い食品なので、販売は禁止されるべきである、と主張するのでしょうか?

http://www.mypress.jp/v2_writers/beep/story/?story_id=1798703#hide

いったいどのようにしたら、このような変なものの見かたができるのでしょう。餅と「直感的に同じ見た目」をしており、しかし餅のようにのどに詰まらせて窒息死に至るという可能性はなく、しかも餅以上に日常生活において普及している食品というのは、いったいどこに存在しているのでしょうか。

あるいは、なぜ自動車用のガソリンには色が付けられているのでしょう。なぜ都市ガスにはにおいがつけられているのでしょう。いくらガソリンの容器やガスの元栓、ホース、ガス機器に警告を目立たせたとしても、ガソリンやガスを「直感的に同じ見た目」をしているより危険性の少ないもの(たとえば、灯油や空気)と同じ扱いをしてしまう可能性があるため、そのような事態を少しでも回避するためなのではないでしょうか。

早い話、こんにゃくゼリーも、たとえばおでんのこんにゃくと直感的に同じ見た目や食感、味をしていれば、たとえそれをよく噛まずに飲み込んで窒息死する人が現れたとしても、製造・販売元への批判は現状のこんにゃくゼリーに対する批判とは別のものになるでしょう。そこまでしなくても、こんにゃくゼリーが、噛まずに飲み込んでも窒息死に至る可能性の少ない普通のゼリーと直感的にまったく異なる見た目をしていれば、話は変わってくるのではないでしょうか。この観点を考慮することなしに(あるいは、どのように考慮したのかを明かすことなしに)「警告を目立たせても、小さな子どもは読めず、事故再発の危険がある」と指摘することを常識に欠ける行為とするのは、いかがなものかという気がします。