スルー対処法の不備

ネットにおいて実名論を主張する人は、実名論には無理があるのではないかという意見に対して、それならば匿名の人に変なことを言われて嫌な思いをさせられた人は、嫌な思いをさせられたままでいなければならないのか?と問い返します。たしかにこの問い返しは当然だと思います。

この問い返しへの対案として出されるのが、匿名の人にたとえ変なこと言われて嫌な思いをさせられたとしても、その発言の内容には価値はないのだから相手にすることなく放置しておけばよいというスルー対処法です。価値のない発言を無視したとしても名誉は損なわれないはずだから、自分の気持ちとして割り切ってさえしまえばうまくいくということらしいのですが、はたして本当にそうなのでしょうか。

たとえ自分はその発言を価値のないものとして相手にすることなく放置したとしても、そのやり取りを目にした他の人がどのように受け取るかは解らないわけです。もしかしたら、その発言を不本意ながらも真実であると認めざるを得ないからこそ黙して放置していると受け取られてしまうかもしれません。第三者にそのような受け取られ方をするのは、さすがに本意ではないでしょう。

もちろん、そのような受け取り方をする人はバカであるという立場をとることも可能かもしれません。でも、それって自分の意図を汲み取らない人はバカであるという決め付けなわけで、万人にお勧めできる方法とはいえないでしょう。そもそも放置という紛らわしい方法を使わなければ、第三者にそのような誤解を生じさせることもなかったかもしれませんし。

というわけで、スルー対処法というのは、第三者に見られている場合にバカ扱いしなければならない人をかえって増やしてしまう可能性があるというデメリットについては、実はあまり考慮されていないのかもしれません。