ネットでの実名論の不備

最近、ネットでの発言は全員が実名でしたほうがいいのではないかというような意見があるようです。

ネットで誰かから変なことを言われて嫌な気分にさせられたときに、相手が実名ならその発言に責任を取らせてギャフンと言わせることもできるのに、相手が匿名ではそれができなくて口惜しいから、というのがその理由です。

また実名の人と匿名の人では、実名の人の方がノーガード戦法で逃げ場がないという意味で変な発言をしたときにギャフンと言わされやすいという状況にあるわけで、だからこそ実名の人は変な発言をしなくなり、ネットはまっとうな価値ある発言のみで満たされるという副次的なメリットが存在すると主張されることもあるようです。

しかし、匿名で発言をしているけれど変な発言をしたりしないという人にとっては、実名を晒すことによってノーガード戦法をとることを強いられるというのは単なる負担でしかありません。匿名であることを制限されるべきは変なことを言う人のみであって、なぜそのようなことをしない自分までが匿名であることを制限されなければならないのかという疑問をもつのは当然のことのように思えます。一方、ネットで実名で発言をしている人にとっては、匿名で発言するよりも実名で発言することにメリットを感じるからこそ実名での発言を選んでいるわけで、ネット全体で匿名で発言されることが制限されても何ら負担は増えません。

結局のところネットにおける実名論は、匿名であることを制限される必要のない人が強いられる負担が考慮されていないという意味で、主張する側の人の一方的な意見にしかなり得ていないのではないでしょうか。